御曹司の契約妻が本物の妻として愛されるまで
「九条様、お料理をお待ちいたしました」
気持ちが俯いたのと同時にピンポーンとインターフォンが鳴って、扉の奥からスタッフの声がする。
どうやら夕飯が届いたようだ。
扉を開けると、ワゴンを押した二名のスタッフが丁寧にお辞儀をした。
「ご夕食を中へお持ちしてもよろしいでしょうか?」
「お願いいたします」
押してきたワゴンごと玄関に入り、スタッフが次々と座敷にあるテーブルに料理を並べていく。
地元の食材を使ったお料理は和食中心でどれも美味しそうだった。
料理に合うという日本酒のセットも用意され、一気にテーブルの上が華やかになる。
そのタイミングでちょうど蓮さんも風呂から上がり、座敷に座った。
「片付けは我々スタッフで対応しますので、内線でお呼びください。お部屋に入るのを控えてほしいということでしたら、ワゴンを玄関に置いておきますので、そちらに皿を収めてください。ワゴンは朝食時に回収いたします」
「わかりました。ありがとうございます」
「それでは、ごゆっくり」
最後にスタッフが小鍋に火をつけて去っていく。
蓮さんは早速日本酒のセットを引っ張ると、用意された三種類の日本酒を開けた。
「千尋も飲む? それとも、他のものにする?」
「あっ、私も日本酒で……!」
「わかった」
三つのお猪口にそれぞれ日本酒を注がれる。