御曹司の契約妻が本物の妻として愛されるまで
 最初は少しにしたほうがいいと言われたけれど、私は並々注いでくださいとお願いした。

「日本酒、好きなのか?」
「いや、あんまりわからない……です。でも、だからこそ味わってみたくて……!」

 つい最近まで、お酒をほとんど飲んでこなかった。バーで出されるカシスソーダで、体が熱くなるほどだ。
 日本酒なんて飲んだら、もっと熱くなりそうだけれど、このあとのことを思うと酔っておきたい。
 彼と同じ寝室で眠るという一大イベントがあるのだ。
 シラフでは眠れない気がして、私は彼と乾杯すると一気に日本酒を煽った。

「んっ……!?」

 透明な水に見えるのに、喉を通った瞬間、粘膜が燃えるように熱くなる。
 臓器の形が浮き上がるような感覚だ。どこを通ったのかわかるほど食道や胃が熱くなる。
 だけどその熱も一瞬で、すぐに引いていった。

「うん、うまい」
「お、おいしい……のかな?」

 よく水みたいに飲めると言うけれど、とてもじゃないがそう何杯も飲めそうにない。
 私はすぐに水に手を伸ばした。

< 114 / 139 >

この作品をシェア

pagetop