御曹司の契約妻が本物の妻として愛されるまで
「そう一気に飲むものじゃないよ。食事をしながら楽しむといい」
「わかりました」

 厚く切られた御造りや、からりと揚がった天ぷら、ぐつぐつと煮えた山菜の鍋に箸をつける。
 どれも美味で箸が止まらず、同じだけお酒も進んだ。

 確かに彼の言う通り、食事と一緒なら日本酒もおいしい。

「ふふ、とってもおいしーです」
「千尋、こぼれてる」
「あっ、すみません……」

 ふわふわと夢見心地な気分で食事を楽しみ、日本酒もおかわりをする。
 だんだん味に慣れてくると、お酒特有のすっきりとした味わいがクセになった。

「もっと、ください」
「ダメ。これ以上はやめたほうがいい。かなり酔ってるみたいだから」
「よってないです。まだまだ飲めます」
「それでもダメ」
「なんれ……」

 蓮さんにお酒を取り上げられて面白くない。
 ならば他のお酒をと思って、座布団から立ち上がった。

「んぁ……」
「待て!」
「いった……!」

 ずるんと足が滑って、畳の床に転がる。
 蓮さんは慌てて私の方まで回ってくると、抱き起こしてくれた。

「もう飲むな」
「や、です……」
「これ以上飲んだら気持ち悪くなる」
「なりませんよ、たぶん……」

 幸いにして気持ち悪さはない。むしろ、気分がよかった。

「蓮さん、あったかいです……」

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