御曹司の契約妻が本物の妻として愛されるまで
「とりあえず、次の行き先を見つけないと……」

 勢いで家を飛び出してきてしまったため、やむを得ず実家へ逃げ込む形になってしまったけれど、なんとか次の行き先を探さねばならない。
 彼が、わざわざ消えた契約妻を追ってここまでくるとは思えないけれど、万が一ということもある。

 ちなみに、職場には有給休暇を申請した。
 溜まりに溜まっていた有給休暇だ。海外旅行へ行くと嘘をついて、とりあえず二週間だけ申請を通した。
 突然、休むと言い出した私に周りは驚いたものの、既にいきなり結婚したという前科があるため、イケメンな旦那さんと旅行にいけて羨ましいという、これまた見当違いな感想を抱かれただけで、それ以上は何か言われることもなかった。

 ひとまず私はここを拠点として、体調が戻り次第、また職場に復帰するつもりだ。
 お腹の子を育てるためにはお金がいる。
 下ろすという選択肢はなかった。
 だって、愛している人との間にできた子どもだ。

 たとえ彼がこの子を抱く日がこなくとも、私だけはこの子を守っていきたい。
 彼に愛されなくても、一人ぼっちになったとしても、私はこの子を育てていきたい。

 そうひとりで決意して、昼休憩のために一旦戻ってきた父に昼食を振る舞う。
 そのあとは何もすることがなかったため、夕飯の買い出しへいくことにした。
 
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