御曹司の契約妻が本物の妻として愛されるまで
 それから車は商店も住宅もない道をどんどんと進み、美しい田園風景が広がる通りを進んでいく。
 私が住んでいる町は田舎ではあるものの、一通り生活に必要な店は揃っている。
 だけど、車で二十分も走れば田畑しか見えてこない。このまま進めば、最後に行き着く場所は海だ。

 一体、どんなつもりで車を走らせているのだろう。
 行き先を尋ねてみたかったけれど、聞けなかった。





「……千尋。起きて」
「ん……ぅ……?」

 優しく肩を揺さぶられて、ゆっくりと瞼を押し上げる。
 どうやら、うとうとしていたらしい。眠った感覚はないけれど、途中記憶が飛び飛びだ。
 一体、ここはどこだろうと身を乗り出してフロントガラスの向こうを見た。

「ここ……どこですか?」
「海だ」
「う、み……?」

 ハッとして顔を上げるも、日が沈んでしまっているせいで何も見えない。
 日が落ちると、空と海が同化して境目がなくなってしまう。目を凝らしても、彼のいう海は見えなかった。

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