御曹司の契約妻が本物の妻として愛されるまで
「マスター、もう一杯」
「だーめだ。これで我慢しとけ」
店主がグラスを下げ、代わりに水が入ったグラスを差し出す。
九条さんは面白くなさそうに手を伸ばしてグラスを掴んだ。
「あ、そこ……」
「ん?」
彼が伸ばした腕のボタンがぷらりと揺れている。糸がほつれているのか、心もとなくボタンがぶら下がっていた。
「あぁ……。今日、仕事中に引っ掛けまして」
彼が外れかけたボタンに視線を落とす。
このままではいつか糸がちぎれて、ボタンが外れてしまいそうだ。
私は鞄の底をあさると、ミニサイズのソーイングセットを引っ張り出した。
「よかったらボタン、付け直しましょうか……?」
少々、服が破れても自分で直しているから、ボタン付けくらいであれば簡単にできる。
このソーイングセットは母から譲り受けたもので、何かあったときのために持ち歩いていた。
今まで一度も外で使ったことはないけれど、今がその使い時だろう。
ジャケットを脱ぐように促したら、彼が数秒固まった。
「あ、あれ……? 私、変なこと言いましたか……?」
「いや、そんなことはないですけど……」
「だーめだ。これで我慢しとけ」
店主がグラスを下げ、代わりに水が入ったグラスを差し出す。
九条さんは面白くなさそうに手を伸ばしてグラスを掴んだ。
「あ、そこ……」
「ん?」
彼が伸ばした腕のボタンがぷらりと揺れている。糸がほつれているのか、心もとなくボタンがぶら下がっていた。
「あぁ……。今日、仕事中に引っ掛けまして」
彼が外れかけたボタンに視線を落とす。
このままではいつか糸がちぎれて、ボタンが外れてしまいそうだ。
私は鞄の底をあさると、ミニサイズのソーイングセットを引っ張り出した。
「よかったらボタン、付け直しましょうか……?」
少々、服が破れても自分で直しているから、ボタン付けくらいであれば簡単にできる。
このソーイングセットは母から譲り受けたもので、何かあったときのために持ち歩いていた。
今まで一度も外で使ったことはないけれど、今がその使い時だろう。
ジャケットを脱ぐように促したら、彼が数秒固まった。
「あ、あれ……? 私、変なこと言いましたか……?」
「いや、そんなことはないですけど……」