御曹司の契約妻が本物の妻として愛されるまで
 父の会社や技術を認め、出資してくれるのは素直に嬉しい。
 だけど、最大の理由はこの縁談だ。
 どうして私を嫁にと思ったのだろう。それこそ、九条グループの人間であれば引く手あまただろうに。

「出資はありがたいです。ただ、どうして私との縁談を希望したんですか……?」

 彼が食事の手を止めて私を見る。
 彼は穏やかに笑うと、あなたに惚れたからです、と恥ずかしげもなく言った。

「ほ、ほれ……!?」
「……というのは冗談で」
「…………」
「私も今年で三十になるのですが、両親が早く伴侶を見つけろと五月蝿くて。隙あらばお見合いを組まれるのですが、正直うんざりしていまして……。いまは仕事一筋で、と思っているのですが、周りが許さず……」

 形ばかりの妻を持ちたいが、両親が勧めてくるような家柄の娘ではそうもいかない。好いてもいない相手と無理やり結婚したところで大事にはできないから、九条グループとは関係のない人間と関係が持ちたいのだと彼が言う。
 だが、仕事柄そういう相手と出会うこともなく困っていたところに私が現れた。
 だから、出資を条件に縁談を取り付けた――……

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