御曹司の契約妻が本物の妻として愛されるまで
「この結婚はあくまで、仮の結婚です。契約結婚、とでも言えばいいでしょうか」
「けいやく……」

 彼の言葉を反芻する。結婚と契約という言葉がうまく結びつかなかった。

「あくまで契約ですので、外ではそれなりに振る舞っていただきますが、妻らしいことは求めません。基本的にはいまの仕事を続けていただいて構いませんし、交友関係もご自由に。ただ、こちらも外聞はありますので、不貞だけは働かれると困りますが」
「は、はぁ……」

 契約妻になるにあたって、しっかりと取り決めを行い、不自由のないように環境を整えてくれるらしい。
 私は喜んだらいいのか悲しんだらいいのかわからず、口を引き結んだ。

「詳しいことはまた追って連絡します。そろそろ、この場所を出ないといけませんので」

 顔合わせから、一時間以上経っている。
 次の予約客がやってくるとのことで、私たちは早々に広間から出された。

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