御曹司の契約妻が本物の妻として愛されるまで
「いま、タクシーの手配をしました」
「ありがとうございます」

 ホテルのフロント経由でタクシーを呼んでもらい、待っている間、彼と連絡先を交換する。
 アイコンが犬の写真で意外だなと見つめていると、両親が飼っている犬だと教えてくれた。

「星名さん。さっきお父様が言っていた好い人のことですけど」
「はい……?」
「もし、そういう人がいるとしても、俺はこの縁談を破棄するつもりはありませんから」

 私がどんな答えを出そうとも、縁談は進める。
 そう強い意志をもった目で見つめられて、私は瞬きも忘れてこくこくと首を振った。

「よかった。まぁ、家のことを思えば、そうせざるを得ないか……」

 彼がぽつりと呟いたのと同時に、二台のタクシーがロータリーに滑り込んでくる。
 先に私からどうぞとエスコートされ、どぎまぎしながらも彼の手を握った。

「またいろいろと決まったら連絡します」
「わかりました」
「あと、最初に伝えた結婚の理由、嘘ではありませんから」
「最初……?」

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