御曹司の契約妻が本物の妻として愛されるまで
 近くにあったペンでさらさらと内容を書き足される。

 彼は契約書の下に自分のサインを施すと、私にもペンを差し出した。同じようにサインをしろということなのだろう。
 私も彼の下に自分の名前を書いた。

「朝、千尋を迎えに行く前に婚姻届を出してきたから、これで今日から夫婦だ。これから、よろしく」
「はい」

 手を差し出され、そっと握り返す。

 夫婦で握手だなんて。まるでビジネスパートナーみたいだ。
 ときめきも色気もない握手だけれど、契約妻なのだからこんなものだろう。

「あぁ、そうだ。荷物を千尋の部屋に入れておいたから確認してほしい」
「わかりました」
「ただ家具だけは一部間に合っていなくて……。特注のマットレスが届いてないんだ」

 早速、今日から私の寝室になるのだという部屋を案内される。
 彼の言う通り、部屋にはフレームだけ組み立てられたベッドがあった。

「今日だけは、俺の寝室のベッドを使ってほしい」
「い、いえ……! それはさすがに申し訳ないので……。ソファーで寝ても問題なければそこで寝ます。ダメだったら、床、とか……」

< 43 / 139 >

この作品をシェア

pagetop