御曹司の契約妻が本物の妻として愛されるまで
 元々、実家では畳の部屋に布団を敷いて寝ていたのだ。硬い床で眠ることにも慣れている。
 どうか気になさらず、と伝えたけれど、彼はダメだと首を振った。

「さすがに床では寝かせられない。ソファーも眠るのに適した素材ではないし……」

 彼が私を見下ろす。
 じっと無言で見つめられて、私はなんだろうかと首を傾げた。

「そうだ、今夜だけ一緒に眠るのはどうだろう?」
「ふぇ」
「二人並んでも十分に眠れるスペースがあるし」
「えぇ……」

 驚きすぎて、腑抜けた声が出る。
 夫婦になったとはいえ、いきなり同じベッドで眠るのはハードルが高い。
 早くも先ほどの制約事項を破ってしまいかねない事態だ。
 絶対に無理です! と力強く断ったら、彼が目を伏せた。

「そうか……。なら今日は俺が床で寝るしか……」
「いや、それは私が……」
「硬いフローリングの上か……」

 話を聞いちゃいない。
 ここで私が折れない限り、本気で床で眠ってしまいそうだ。

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