御曹司の契約妻が本物の妻として愛されるまで
 グラスに白ワインを注がれる。彼は二人分のワインを注ぎ終えると、乾杯と言って私のグラスに軽く押し当てた。

「い、いただきます……」

 夕飯でワインだなんて初めてで味がよくわからない。
 ただデパートで買ってきたというお惣菜はどれもおいしくて、ついパクパクと食べてしまった。

「随分とおいしそうに食べるな」
「すみません……! 私ばっかり……」
「いや、千尋のために用意したものだから。喜んでくれたのなら嬉しい」

 さっきから彼の手は止まっている。ワインばかり口にしているように見えた。
 お酒が好きなんだろうけれど、それにしたって食べなさすぎな気もする。
 もしかして私に気を遣ってなのだろうか。だとしたら、申し訳なさすぎる……。

「あの、蓮さんは食べないんですか?」
「あー……、俺は食べ飽きてしまって。いつも買ったものしか口にしていないから」
「そうなんですね……」

 こんなにおいしいのに。もったいないとも思うけれど、確かに毎日同じものを食べていたら飽きてしまうかもしれない。
 おまけにデパートのお惣菜では高くつくし、栄養も偏る。

 ――明日からは、自分で作ろう。

 彼の妻になったのだ。少しでも彼の役に立ちたかった。

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