御曹司の契約妻が本物の妻として愛されるまで
「あの、もしよければ、これからは私が作りましょうか……?」
「千尋が……? いいのか?」
「もちろんです。ここまですごいものは作れませんが、ずっと自炊をしてきたので、ある程度のものは作れます」

 そう言えば、彼の表情が見るからに明るくなった。

「ぜひ、お願いできると嬉しい」

 身を乗り出し、食い気味に返事をされてたじろぐ。
 自分で言い出したとはいえ期待値を上げないよう、一般的な家庭料理しか振る舞えないとは伝えたけれど、彼は嬉しそうに笑った。

「千尋の手料理が食べられるなら、俺はなんでも嬉しいよ」
「そ、そう……」

 ならば、早速明日から振る舞いたい。
 彼に苦手なものや好きなものを尋ねたけれど、なんでも食べられると返ってきた。

「ただ、強いて言えば和食が食べたいな」
「和食、ですか?」
「接待でイタリアンとかフレンチはよく食べるから」
「わかりました」

 むしろ、和食のほうがありがたい。
 オシャレな料理に縁遠い私には、洋食や中華はあまり自信がなかった。

「キッチンは自由に使ってくれて構わないよ。もちろん、冷蔵庫も。食材は……そうだ、あとでカードを渡しておく。それで好きにしていいから」

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