御曹司の契約妻が本物の妻として愛されるまで
 一瞬、よからぬことを想像し、慌てて妄想を打ち消す。
 湯船で身体を温め、お風呂から出た私は、自分の寝室で眠れないことを思い出してリビングに戻った。
 あいにく、彼は自室か書斎にいるのかリビングにはいない。

 広すぎるリビングはどこも掃除が行き届いている。いつの間にか食事をとったテーブルには、迎えに来るときに用意したという花が飾られていた。

「綺麗……」

 薔薇を中心にブーケを作ってくれたらしい。赤ではなく、ピンク色の可愛らしい薔薇にカーネーションやかすみ草も混ぜられていた。
 私をイメージしてなのだとしたら、随分と可愛らしすぎる。だけど花をもらった経験がないため、素直に嬉しかった。

「風呂、上がったんだな」
「蓮、さん……」

 いつの間にかリビングに戻ってきたらしい彼が、冷蔵庫のドアを開ける。
 取り出したミネラルウォーターのボトルを手渡された。

「ありがとうございます」
「中にあるものは自由に飲んでいいから」
「わかりました」
「あ、そうだ。もう寝る?」

 忘れかけていたことを思い出す羽目になってしまって、カァと頬が熱くなる。
 静かになる私に、彼がどうした? と顔を覗き込んできた。

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