御曹司の契約妻が本物の妻として愛されるまで
「えっと……、はじめまして。星名千尋と申します」
「やぁね、もう九条でしょう?」
「あっ……」
「母さん、いきなり千尋に触るな」
「ちょっと、無理やり引き剥がさないでよ! ほんっと、ヤキモチ焼きなんだから」
「違う」
「そんなこと言って。昔は蘭と私がくっついてると、ママは俺のだ! って言って、よく取り合ってくれたのに……」
「余計なことを言うな」

 お義母様と私の間に割って入った彼が、ギロリとお義母様を睨む。
 どさくさに紛れて彼に体を抱かれていることに気づき、ぶわっと頬に血が集まった。

「あ、の、蓮さん……」
「なに?」
「その、ちょっと近いです……」
「あぁ、悪い……」

 パッと体を離されて、呼吸を整える。
 その一部始終を見ていた百合さんが、うふふと口元に手を押さえて笑った。

「まぁ、初々しい」
「ほんと、蓮にしちゃあ慎重なほどだなぁ」

 遅れて入ってきた男性も、ケラケラと笑う。
 だけど、その男性を目にした瞬間、えっ? と素っ頓狂な声を上げてしまった。

「バーの店主……さん?」
「こんにちは、千尋さん。会うのは久しぶりだねぇ」

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