御曹司の契約妻が本物の妻として愛されるまで
 いよいよ彼が頭を抱えて、もう早く帰れと両親を手で追い払う。
 そんな蓮さんを見ても、ご両親は一切ソファーから立ち上がることなく、ここでお義兄様たちを待つと言い出した。

「ダメだ。全員集まったら俺が死ぬ」
「やぁね、縁起でもないこと言って」
「とにかく帰ってくれ!」

 彼の怒声でやっと帰ってくれる……はずもなく。
 まさに暖簾に腕押し状態で蓮さんが説得し続けるも、いまいちお義母様と会話が噛み合っていなかった。

「……あ、悪い。ちょっと電話だ」

 そうこうしているうちにお義父様が立ち上がって、電話をしながら廊下の奥へ行ってしまう。
 自由な家族で見ているだけでも楽しいなぁ、と笑って見ていると、お義母様にちょんちょんと袖を引かれた。

「どうしたの? なにか面白いことでもあった?」
「いえ……。その、うちは母が幼い頃に亡くなっていて……。一人っ子でしたし、父も仕事に一生懸命でしたから、家族でこうして会話をすることはあまりなかったな、と思いまして」

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