御曹司の契約妻が本物の妻として愛されるまで
 だから、ちょっとだけ九条家が羨ましい。
 そう口にはしなかったけれど、二人とも私の気持ちを察したようだった。

「すぐにうちの五月蝿さに慣れる」
「そうよ〜。それに、いつか家族も増えるかもしれないわ」

 お義母様が私の手を握る。にっこりと無垢に笑う彼女は、まるで少女のようにも見えた。
 美魔女というよりは、文字通り年齢不詳である。

「百合、仕事で戻らなきゃいけなくなった」
「あら、そうなの? 残念。じゃあ、私たちはそろそろ行くわね」

 電話から戻ってきたお義父様が、百合さんに手を差し伸べる。
 流れるような所作でお義母様はお義父様の手を握り、立ち上がった。

「それじゃあね。入れ違いになっちゃうけど蘭によろしく」
「絶対、家には入れないから安心してくれ」
「もう! 意地悪しないの!」

 まるで嵐のような人たちだ。
 ご両親を玄関まで見送り、彼らが見えなくなるまで丁寧に頭を下げる。
 やっと静かになったと息をついていると、また扉の向こうが騒がしくなった。

「やぁ! 蓮、元気にしてたか?」
「チッ、間に合わなかった……」

 蓮さんが施錠しようとする前に扉が開き、これまた美丈夫が外に立っている。
 その横には手を繋がれた三歳くらいの子どもの姿もあった。

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