御曹司の契約妻が本物の妻として愛されるまで
 ついには私の肩に頭を預ける形で彼が寄りかかってきて、ひぅっ、と小さな悲鳴をあげる。
 彼は腕を組んだまま、目を閉じてしまった。

「あの、蓮さん……?」
「……楓だけ、ずるいだろ」
「はい……?」
「なんでもない。こっちの話。……俺も少しだけ寝る」

 ベッドでちゃんと寝たほうがいいだろうし、ソファーは広いのだからわざわざ私に寄りかからなくてもいいだろうに、蓮さんは動こうとしない。
 両方からより掛かられて重いはずなのに、なんだか悪い気はしなかった。

 ――子どもができたら、こんな感じなのかな……。

 ふふっ、と無意識のうちに笑ってしまって、慌てて口を閉じる。

 私と彼が愛しあうことはない。
 私だけが、彼を好きなのだから。

 ――だけど、今だけは許されるよね……。

 蓮さんも疲れていたのか、やがてすうすうと寝息を立て始める。
 なるべく体が動かないように、彼がもたれ掛かっている方とは反対側の手を伸ばし、そっと彼の髪に触れる。
 存外、柔らかな毛が指に絡まる感触を楽しみながら、私も彼により掛かる形で目を閉じた。

< 76 / 139 >

この作品をシェア

pagetop