御曹司の契約妻が本物の妻として愛されるまで

 ◇

「今日はありがとうございました」

 お礼の品だと袋に入ったお菓子を手渡しながら、蘭さんがお礼を言う。


 あれから私たちは三人でくっつき合って眠ってしまった。
 最初に起きたのは彼だそうで、そのあと楓くんも起きたらしい。
 千尋は疲れているからと、最後まで気を回されて起こされなかった私は、三人の中で一番遅い起床となってしまった。
 蘭さんの来訪を告げるインターフォンで起きたと言ってもいい。
 飛び起きた私は慌てて身なりを整えると、迎えに来たという蘭さんのもとへ蓮さんと一緒に楓くんを玄関まで連れて行った。

「楓、今日は楽しかった?」
「うん、たのしかったよ! でんしゃであそんで、サッカーボールつくった」
「サッカーボール……?」
「あっ、おにぎりのことです」
「そうですか。楓もすごく喜んでいるみたいなので……。よっぽど楽しかったんですね」

 蘭さんが楓くんの頭を撫でる。
 一方の蓮さんは当分来るなと蘭さんに言っていた。

「あとね、蓮がさっき」
「こら、楓」

 蓮さんが楓くんの頭を軽く小突く。
 言わないって約束しただろ、と咎める蓮さんを無視して、楓くんが私のことを指差しながらとんでもないことを口にした。

「ちひろに、ちゅーしてた」
「楓!」
「へぇ……」

 蓮さんが声を荒げ、蘭さんが愉快そうに目を細める。
 私はなんのことかわからず、楓くんと彼を交互に見た。

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