御曹司の契約妻が本物の妻として愛されるまで
◇
一週間も仕事を休んでしまって不安だったけれど、案外どうにかなるものだった。
積み上がった仕事で夕方ぐらいまでは大変だったけれど、いまではそれも落ち着いている。
私は一度休憩をしようと自前のカップを持って立ち上がると、給湯室へ向かった。
「……星名さん、本当に結婚したと思う」
「えー、どうなんだろ。さすがに嘘ってことはないんじゃない?」
「でもあの星名さんだよ? 飲み会にも来ないし、雑談にも参加しないし、毎日残業ばっかりしてる星名さんが結婚なんてあり得なくない?」
「なんか無理やり残業してたっぽいよね。部長も困ってるって前に言ってたよ」
「てか、バイトもしてるって噂」
「なにそれ、お金ないってこと?」
「そうなんじゃない?」
「え、てことは、もしかして結婚相手って俗に言うパパ活の延長で……とかだったりして」
「あはは! さすがにアラサーでそれはなくない?」
廊下から女性社員たちの声がする。
確かに、私はこの会社で浮いている。
飲み会にも参加しなければ、社員同士でのコミュニケーションにも不参加気味だ。
毎日のように残業していたし、プライベートの時間も潰してバイトをし、実家に仕送りしていた。
性格も明るい方だとは言えない。周りから一歩引いた目で見られていることも理解している。