御曹司の契約妻が本物の妻として愛されるまで
 蓮さんに咎められて、蘭さんが引っ込んでいく。
 だけど、さっき言われたことが気になって仕方がなかった。

 ――やっぱりとんでもない値段なんじゃ……?

 落としたら洒落にならないと右手を庇うように左手を添える。
 イヤリングも落としてないだろうかと確認したところで、蓮さんに両肩を掴まれた。

「さ、行こう。千尋」
「もういいんですか?」
「あぁ。あとは適当に挨拶して帰る」

 ご両親との挨拶もそこそこに手を引かれ、蓮さんと共に会場を歩き出す。

 わかってはいたことだけれど、九条グループの御曹司であり、百合さんや蘭さんに負けず劣らずの綺麗な顔をしていることもあって、立ち話をしている人たちの横を通るたびに視線を向けられる。
 その中には私に向ける敵意の混ざった視線もあって、背中がぞわりと粟立った。

「どうした? 具合でも悪いか?」

 彼が立ち止まって、私の顔を覗き込む。
 なんでもないと返しかけたところで、「あの」と後ろから声をかけられた。

「なんだ?」
「九条蓮さん……ですよね。私、以前にもお話させていただいた、早坂弥生(はやさかやよい)です」

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