政界のプリンスは年上彼女の溺愛を閣議決定しました!
紅白幕には演壇が設けられ、日本の最高権力者がそこに立つ。
「桜を見る会の成功を祈り、乾杯!」
 内閣総理大臣にして与党保守党(ほしゅとう)総裁の物部泰三(もののべたいぞう)は肉厚な笑顔を浮かべ、開会の音頭を取った。
 国の厳かな文化的行事は酒池肉林の下品な政略パーティとなりつつある。
 物部泰三は自身の選挙区の有権者に、保守党党員になれば桜を見る会に招待すると勧誘している。そのため、会の参加者は年々膨れ上がり、参加者の本質は一万数千人の保守党党員である。それをカムフラージュするため、芸能人や各界の功労者を呼び込んでいる。
 この保守党による無節操な招待を野党やマスコミは問題視し、税金の無駄遣いとしている。
 この日、桜を見る会会場には新聞記者の磯月望子(いそつきもちこ)が潜入していた。切れ味鋭い追及で有名な反権力志向の記者だ。
「東都新聞の磯月望子です。ご覧の通り桜を見る会会場では飲食による接待が行われ、芸能人と政治家らの様子を有権者が楽しそうに見ています。これも私たちの税金が使われているのです」
 望子は物部総理大臣に突撃取材を試みる。
「総理! 総理! これは税金による接待なのではないですか?」
「総理はご多忙ですので」
 物部総理の前に、内閣府参事官桜俊一が立ち塞がる。
 総理大臣を参事官が守った格好だが、これこそまさに物部の官僚への支配が強固なことを示していた。
 官僚は物部の私兵ではあるまいに。
「あなたは誰ですか?」
「内閣府の桜俊一です」
「ちょっとカメラカメラ! 公権力が取材を妨害しています! 報道を弾圧しています!」
 磯月望子がヒステリックに騒ぎ出した。
「!」
 その様子を見ていた娘の桜香子は、焦った。
「(お父さんが危ない!)」
 その様子を見かね、秋津悠斗は父に連絡を取る──物部内閣で警察行政、防災を引き受ける秋津文彦大臣に。
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