勘違い一夜から始まる極甘策士なドクターの激愛婚〜偽装結婚は旦那様の甘い罠でした〜
「じゃあ、芹澤先生は魔法使いですね。身体の傷や変形を治してくれるだけじゃなくて、皆の心も明るくしてくれる、大魔法使い様です」

 決して過言ではないと思いながら笑顔を向けると、私を見る彼の瞳がわずかに見開かれたような気がした。

 そうだ、今あのときの感謝を伝えよう。実は何年も前に、あなたの言葉に救われていたんだって。

 一度彼から目線をはずして、そう思い立った瞬間──カシャッ、と小気味いい音がした。

「え……っ」

 驚いてぱっと彼を見やると、カメラのレンズがこちらを向いていたので目を丸くする。今、私が撮られた?

 彼はカメラを下げ、無邪気に笑う。

「ごめん、思わず。今の君の笑顔がすごく魅力的だったから」

 初めてもらったそんなひと言に、みるみる頬に熱が集まる。

 先生が写真を撮りたいと思うとき、イコール心が奪われる瞬間、だったよね……? 私に対してもそう感じたのかと思うと、とっても胸がくすぐったいんですが。

 動揺して縮こまる私を、先生は観察するように見つめて言う。

「花恋ちゃん、仕事のときと雰囲気が違うよね。この間の営業のときは終始ニコニコしてて柔和な印象だったけど、今日は基本クールで、自然に微笑む感じ」

 的確にあてられてはっとした。

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