執愛滾る脳外科医はママと娘を不滅の愛で囲い込む
 土曜の午後。
 私は母の病室を訪れていた。
「それにしてもすごい雨ね」
 母が病室の窓を見つめながらそうつぶやく。
「ねっ。土砂降りになる前に、病院に着いてよかったよ」
 備え付けの冷蔵庫にペットボトルの水を入れながらそう答えると、母が「そうね」と言って微笑んだ。
「水分不足は脳の大敵なんだって。だからちゃんとこまめに水分を取ってね」
「はいはい。なんか瑠璃、お母さんみたい」
 ベッドのヘッドボードに背を預ける母が、口もとに手を置きながらクスクスと笑い出す。
「そうかな? そういえば、もうじき退院だね。家に戻ったら退院祝いしなきゃ。なにが食べたい?」
「そうねぇ、瑠璃が作るハンバーグかしら?」
「え? そんなのでいいの?」
 まさかの返答に目を瞬かせていると、母の表情がぱっと明るくなったのが見て取れた。
「だって、瑠璃が作るハンバーグは世界一美味しいもの」
「世界一だなんて、大げさなんだから」
「嘘は言わないわよ。瑠璃の料理はお店を出せるレベルよ」
 親バカ炸裂で思わず笑ってしまう。
「ありがとう。じゃあ腕によりをかけて作るから」
「ふふっ。楽しみにしてるわ」
 こんなふうに母と笑って過ごせているのは、他ならない蓮斗くんのおかげだ。
 本当に彼には、感謝してもしきれない。
 だからこそ、いつまでも逃げていないで過去の発言を謝らなきゃ。
 そんな思いに駆られながら、私は母の病室を後にした。
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