執愛滾る脳外科医はママと娘を不滅の愛で囲い込む
 ん?
 篤紀?
 珍しく弟からの着信だった。
「もしもし?」
 私は少し身構えながら、その電話に出た。
『姉ちゃん、今、どこ?』
 電話越しの篤紀の声には、どこか切迫感が滲んでいる。
 いったいどうしたというのだろう。
 胸の騒めきは増すばかりだ。
「今から電車に乗って家に帰るところだけど、なにかあったの?」
 だから思わずそう聞き返してしまった。
『母さんが会社で倒れて、(さい)(はら)総合病院に緊急搬送されたらしい。さっき母さんの会社の同僚の人から連絡があったんだ』
「え?」
 お母さんが……倒れた?
 そんな……。
 一瞬、思考が停止し、手に持つスマホを落としそうになる。それと同時に、心臓がドクドクと激しい鼓動を刻み出した。
『俺、今、出張で名古屋(なごや)にいるんだ。だから、姉ちゃん代わりに……』
「分かった! 今から病院に向かうから」
 震える体を必死に奮い立たせながら、タクシー乗り場へと走り出した。
 すぐにタクシーに乗って、才原総合病院の緊急外来へ。受付スタッフに尋ねると、今は検査中だと言われ、カンファレンスルームへと通された。
 どうしてこんなことに?
 もっと母を気遣ってあげていたら?
 定期的に実家に顔を出していたら?
 そしたら、変化に気づけたかもしれない。
 多大なる後悔に襲われながら、部屋の中を行ったり来たり歩き回る。
 ちょうど部屋の時計を見上げた瞬間、ノック音が響き意識がそちらに持っていかれた。
 母の検査が終わったのかもしれない。
 脳裏に浮かび上がるのは、そんな憶測だ。
「はい」
 ギュッと拳を握りながら返事をすると、青いスクラブ姿の長身の男性スタッフが部屋の中に入ってきたのだが……。
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