電話越しで恋をした副社長から、突然プロポーズされました
「副社長、湯元さんもこちらに来ていたなら、一緒に食事をしたらよかったんじゃないですか?」
女性社員が気を使って言ってくれているみたいだった。
「それもそうですよね。気がついてあげられなくて申し訳なかった」
「そうですよ。ロビーで待たせておくなんてかわいそうですよ」
優しい先輩たちだと感じたけれど、私は本当に下っ端の社員なんだということを実感した。翔太さんに会いたくて北海道からわざわざ来てしまったけれど、間違いだったんじゃないかなと思ってしまう。
「少し遅くなってしまいましたが、湯元さんをおもてなししようと思います。みなさん、お疲れ様でした。では、行きましょう」
翔太さんに声をかけて私はみなさんに会釈してから彼の後ろをついて行った。エレベーターに乗り込む。
「みなさんがいると知らずにロビーで待っていて申し訳ありませんでした」
「え? なんで謝る?」
「新入社員の私と副社長がプライベートで会っているなんて、変な噂を立てられたら困ります」
「俺は困らないけどね」
隠さなくてもいいと言った態度に私は感動していた。でもやはり変な噂を立てられたら困る。
「こういうことは、隠されたほうがいいかと……」
「明菜が本社勤務になったとき、副社長と付き合っているってなったらいろいろ聞かれてかわいそうだし。そうだな。正式に結婚するまでは秘密にしていたほうがいいかもしれない。これからは俺も気をつける」
部屋に到着した。
出張で泊まるような部屋ではなく、スイートルームだった。
翔太さんは私が福岡まで行ったからわざわざ予約してくれたんだ。
「今日は特別にいい部屋を予約したんだ」
「ありがとうございます。会えるだけでも嬉しいのに」
「北海道から来てくれたし思い出になってほしいなと思って」
ドリンクや簡単な食べ物を注文してくれ、ゆっくりと過ごすことにした。
今週は会えないと思っていたからこうして会えた事が嬉しいし、彼は仕事だけど一緒に旅行をしているような気持ちで幸せだった。
しばらく話をしていると、副社長はなぜか急に改まった。
今までの空気とは明らかに違ったのだ。
立ち上がって奥の部屋に行き、何かを手に持って近づいてきた。
「俺と結婚してもらえませんか?」
まさかこんなにも早くプロポーズされるとは思っていなかった。