電話越しで恋をした副社長から、突然プロポーズされました

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札幌に戻ってきてから数日後。
私は夜翔太さんとオンラインで顔を見ながら話をしていた。
『明菜の両親に挨拶に行きたいのと、俺の両親に会ってもらいたいんだ』
「そうですよね。ぜひ」
婚約をすると、話がだんだんと具体的になっていく。
『仕事はどうしたいと思ってる? 俺はできるだけ希望を叶えたいと思っているんだ』
入社して、まだ半年しか過ぎていない。
こんな素敵な出会いに恵まれると思っていなかったし、半年前まで私は仕事で頑張って、会社に社会に貢献していこうと考えていたのだ。
『急にこんな話をされても困るよな。入籍のタイミングと、仕事のこと、明菜の考えも聞かせてほしいから教えてくれ』
翔太さんは、いつも私の意見を尊重してくれる。
包容力があるし引っ張ってくれる力もあるけれど、私という人間を大切にする気持ちが本当にありがたい。
だからこそ、私も真剣に考えなければいけないと感じていた。

週末が終わり、私はまたいつものように事務所に行って仕事をする。今日も留守番することが多く黙々とパソコンに向かっていた。
作業をするなら嫌いではない。
自分なりに工夫してデータの加工をして上司に喜んでもらうのは楽しい。
仕事は私にとって、生活費を得るために必要なものだ。だが、それだけじゃない。
私の仕事は旅行会社。
旅行を通してお客様が幸せな時間を過ごす。
直接お客様に旅行を売るわけでもないし、旅行の商品を作っているわけでもない。
事務の仕事が直接お客様に関係しているわけでもないけど、それでも何かつながっているんだと思ったら、嬉しいのだ。
そして自分もこの社会の中に少しでも貢献できていると感じることができる。
学生時代には味わえなかった社会人としての生活で、学ぶことも多いし、人間的にも成長していけるのではないかと思う。
――でも、具体的にと言われたらわからない。
新入社員として働き始めてまだ一年も経っていない。それに、来年には本社勤務になるはずだ。
仕事を辞めて妻となってしまったら、私は成長していけるのかな。
もちろん夫を支えていくこと、子供を産んで育てていくことで自分なりに成長するとは思うけれど、それはまだ未来のことで今の私には早いのではないか。考えても想像することができなかった。
翔太さんは、私の考えをなるべく尊重したいと言ってくれていた。
彼と将来を約束し結婚することは喜ばしいことだが、もっと成長した私になってから結婚したほうが役に立つのかもしれない。
この気持ちを話そうと私は決意をした。
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