電話越しで恋をした副社長から、突然プロポーズされました

金曜日の夜に翔太さんがやってきた。
彼の姿を見ると心から安心して幸せな気持ちになる。
でも今日は明日両親に会うということでお互いに緊張していたかもしれない。
ソファに並んで手をつないで過ごしているけれど口数が少なかった。
「明菜の両親は結婚を許してくれるかな」
いつになく不安そうなので私は翔太さんの手を強く握り返した。
「それは私も同じ気持ちです。翔太さんのご両親はもっと立派なお嬢さんじゃなきゃダメだって言うんじゃないかと」
すると今度は彼が私のことを強く抱きしめた。
「そこは自信持ってほしい。明菜はどこのお嬢さんよりも素敵で、俺が唯一好きになった人なんだ」
いい声で言われる――
恥ずかしさがいつも以上に増してしまう。
でも愛せる人がそう言ってくれているのだから、少しは私も自信を持っていきたい。

次の日の朝。
私と彼は準備をして実家へと向かった。
実家はタクシーで三十分のところにあり、帰ろうと思えばすぐ帰れる距離だが、最近は顔を出すことが少なかった。
実家のチャイムを押すと母親が出てくる。
翔太さんの素敵すぎる容姿といい声での挨拶に、母は少し照れているようだった。
リビングに入ると父が緊張した面持ちで会釈する。
「初めまして。明菜さんとお付き合いさせていただいております、丸谷翔太と申します」
「彼は……実は私の会社の副社長さんなの」
紹介すると両親は顔を合わせていた。さすがにびっくりしたに違いない。
出会った経緯を話し、お互いに電話のやり取りで仕事をするうちに心を通わせたということを伝えた。父ははじめ心配そうな顔をしていたけれど、私たちが本気だと理解してくれたようだった。
「結婚を前提にお付き合いさせていただいております。ご両親にも認めていただきたくて本日はご挨拶に来ました」
「そうは言っても娘は新入社員でまだ若いんです」
「おっしゃる通りです。明菜さんの気持ちを尊重しながら、結婚の時期は話し合っていきたいと思っていました」
「それにありがたいことですが、大企業の副社長の妻となるのは、娘には重荷なのではないでしょうか?」
「お父さん。私はそれを覚悟の上で今日ここに来ているの。私も大丈夫かなってすごく心配で不安でずっと悩んでいたんだけど、でも翔太さん以上に好きになれる人は現れないって思って。微力ながら彼を支えて行ける人になりたいと今努力してるところ」
自分の気持ちを真剣に伝えると隣にいる翔太さんは感動しているようだった。
私の考えていることをしっかりと伝えたことはなかったかもしれない。
幼い頃から自分の意見を強く言えなかった私だった。
でも――自分の言葉で言うことができた。
これだけでも両親は私が翔太さんと出会って、プラスに変わっているというのをわかってくれたと思う。
「歳の差があります。なので意見の相違が出てしまうこともあるかもしれません。迷ったときはお互いに話し合い明菜さんの意見を尊重しながら一緒に前に進んでいきたいと考えております」
両親は翔太さんの誠実な人柄と、私のことを何よりも考えてくれていると納得してくれたようだ。
最後には頭を下げてくれた。
「大事に育ててきた一人娘です。ご迷惑おかけすることもあると思いますが、どうぞよろしくお願いします」
両親が私のことを心から大切にして育ててきてくれたのが伝わってくる。
ありがたくて、涙をこらえるのに必死だった。
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