電話越しで恋をした副社長から、突然プロポーズされました
その日の夜、千歳空港から東京に向かった。
翔太さんの家で過ごさせてもらう。
東京タワーが部屋から眺めることができて、夜景がとてもキレイなマンションの最上階に彼は住んでいた。
何度か訪れていることはあったけれど、黒を基調にした家具が多く、シンプルなお部屋。台所がとても広くて遊びに来たときはここで料理をするのが楽しみだ。
ただ今日は明日のこともあるので、翔太さんがおすすめのレストランで食事をしてから自宅に戻ってきた。
翔太さんの家はバスルームが広々としていて、浴槽に二人で入っても十分なスペースがある。
遠距離恋愛中なので、会えるときはなるべくそばにいたいからと、一緒にお風呂に入るのが定番になっていた。
頭のてっぺんからつま先まで丁寧に洗ってくれる。
照れるし、くすぐったい。
「キレイになった」
「ありがとうございます……」
バスタブに二人で浸かった。
翔太さんのお気に入りのバスソルトで、いい香りだ。
「娘さんをくださいって挨拶するのは緊張するものだな」
「私も明日すごく緊張しますね」
「あぁ。明菜は素直でいい子だから緊張しないでそのままでいてほしい」
「いつか……三年後とか五年後とかどれくらい先の未来になるか予測はできませんが……結婚するときは挨拶をしなければいけないと思っていたのでそれが早くなったんだなと覚悟して行きます」
「明菜は、社会人としてやっぱり働きたい?」
「すごく悩んでいました。社会人経験をしてから結婚すべきなんじゃないかなと。そのほうが翔太さんを将来的に支えていけるって思っていました」
彼は一瞬無言になった。
もしかしたらもっと早く入籍したいと思っているのかもしれない。
「入籍が早かったとしても私はできれば仕事を続けたいです。でも副社長の奥さんが会社で働いているなんてそれもちょっと変なのかなと。今の時代はそれでも大丈夫なのかなって……。どの道が正しいのか迷ってしまいます」
「明菜」
お風呂の中で後ろから抱きしめられた。彼に包み込まれて本当に幸せでとろけてしまいそう。
翔太さんのお父様は、我が社の社長だし、お母様はこんなに素敵な彼を育てた人だし、考えるだけで頭が痛くなってくるけど、でも……楽しみにしながら会ってこようと決意をした。
次の日、ランチの時間帯に翔太さんの実家にお邪魔するために、彼の運転する車で向かっていた。
そして、閑静な住宅街に入っていく。
どの家も立派で住んでいる人はお金持ちが多いのではないかと想像できるようなところばかりだった。
その中でも目立っていて高い塀に囲まれている一軒家に到着した。
門が開き車が中に入っていく。キレイに手入れされた庭が目に入り、小さな噴水まで設置されていた。
モーターショーかと思うほど高級車が並んでいて、ここで生まれ育った彼と私ではあまりにも身分差があるのではないかと尻込みする。
車を停車し運転席から降りてきた翔太さんは、なかなか車から降りようとしない助手席に回ってきた。
車から降りるのも体が震えてしまう。
「明菜? 顔色が悪いみたいだけど大丈夫か?」
「……そ、そうですか?」
翔太さんと私は生きる世界が違うのだと実感して、息が詰まりそうになった。
生まれ育った家を見てそう感じた。
本社で働いている姿を見たことがないし、自分の中ではかなり距離が近い人だと思ってしまっていたのだ。
「さぁ、行こう」
しかしここまで来てしまったので引き下がるわけにはいかない。
手土産をぎゅっと握りしめて私は彼の後ろをついて行った。
玄関の扉が開き出てきたのはお母様だ。品が良くてどちらかというとかわいらしいという印象。
「ただいま」
「まぁ、翔太、本当に女の子を連れてきてくれたのね」
「嘘なんかつかないよ」
翔太さんは少し呆れているような言い方だった。
「湯元明菜さん」
紹介されたので私は手土産を差し出しながら挨拶をした。
「初めまして。湯元と申します。つまらないものですが……」
「ありがとうございます。どうぞ中に入ってください」
「お邪魔します」
玄関の中に入るとホテルかと思うほど広い空間だった。素敵な絵画や調度品が飾られている。ふかふかのスリッパが用意されていたので足を入れた。