電話越しで恋をした副社長から、突然プロポーズされました
それから二週間が経過し、本社で働くことにも少しずつ慣れていく。
総務部長に来客が来ていたので、飲み終えたコーヒーカップを給湯室で洗っていた。
これを終えたら急いでデータを作らなければならない。
手を動かしながらも、頭の中は仕事のことでいっぱいだった。
コーヒーカップを洗い終え水道を閉じたとき――
「お疲れ」
大好きな人の声が聞こえて振り返ると、やっぱりそこには副社長がいた。
「お疲れ様です」
「仕事は慣れてきたか?」
「はい。もっとテキパキ動けたらいいなと思っているんですけど。中田さんのような素敵な女性になりたいです」
何気ない言葉だったのに副社長の機嫌が急に悪くなった。
「明菜は人と比べる必要はない。とても素敵な人だよ」
職場だというのにプライベートの口調で話されたのでびっくりした。
歯の浮くような甘いセリフに、思わず私はめまいを起こしそうになる。
そこに商品企画部の女性社員が入ってきた。
あの……福岡のロビーで会った人だ。
「お疲れ様です」
含んだ笑みを浮かべて私と翔太さんのことを見比べていた。
もしかして今の会話を聞かれてしまったかもしれない。背中のあたりがヒヤッとした。
「この前の企画とてもよかったですよ」
翔太さんは急に副社長の口調になった。
「ありがとうございます! 来週韓国に出張なんです。またお客様に喜んでいただけるような企画を考えてきますね」
「期待しています」
何事もなかったかのように副社長はその場を去っていったが、きっと怪しまれたに違いない。