電話越しで恋をした副社長から、突然プロポーズされました

しかしプライベートでは毎日優しく抱きしめてくれる。
彼の腕の中にいると安心するし、この幸せが続けばと願う。
だからこそ仕事のことは口にできなかった。
それから私と翔太さんは家では仕事のことは一切話をしなかった。
職場では、北海道支社をたたむための作業をする日々が続いていた。
愛されていると実感しているのに、自分は必要とされていないのではないかと不安に襲われる日々だ。
この胸の中にある感情は嫉妬なのか、心配なのか、自分でもはっきりしていない。
ただもやもやしていることは間違いない事実で、このまま気持ちを伝えないでいるのは違う気がしていた。

それから数日後。
私の胸はまだ曇り空の中にいるようだった。
翔太さんのマンションに戻ってきて、調理をしながら考えていた。
今日こそ自分の感情を伝えなければならない。
でもちゃんとうまく伝えられるだろうか……。
「ただいま」
翔太さんの声が聞こえてきて心臓がドキッとした。
手が離せなかったので玄関まで迎えに行けない。
リビングから廊下につながる扉が開き、翔太さんが入ってきた。
気のせいかもしれないけれど、空気がなんだか重たい。
「すごくいい匂いがする。美味しそうな料理を作ってくれてありがとう」
「いえ……」
翔太さんが近づいてきて私の隣に立った。
腕まくりをして私の顔を覗き込んでくる。
「俺も何か手伝おうか?」
「大丈夫です。ゆっくりしていてください」
プライベートタイムでは仕事の話は極力避けていた。
いつも仕事で大変な思いをしている彼に、家庭に仕事のことを持ち込ませたくなかったのだ。
「元気ないように見える。ここのところずっと……」
「……そうですか?」
平気なふりをして口を開くが、翔太さんには私の心を読まれているような気がした。
「言いたいことがあるんじゃないのか? 悩んでいることでもいいし、俺には全部言ってほしいんだ」
もうこれ以上気持ちを隠しておくべきではない。
私は勇気を出して話すことを決意した。
料理の仕込みが終わったので手を洗って、翔太さんに体を向ける。
「私では……力不足だったでしょうか?」
「え?」
翔太さんはきょとんとしている。
唐突な言い方をしてしまったかもしれない。
理解してもらえるように噛み砕いて伝えることにした。
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