電話越しで恋をした副社長から、突然プロポーズされました
「仕事の担当が変更になったので……」
「そんなことで悩んでいたのか……」
翔太さんは額に手のひらを当てて大きく息を吐いた。
そして私の目を真剣に見つめてくる。
「確認だが、仕事をもう少し続けていきたいという気持ちは変わっていないか?」
今すぐに答えられることではなく私はつい黙り込んでしまった。
その点についてもものすごく深く悩んでいたのだ。
翔太さんの両親のことを考えると――今すぐにでも仕事を辞めて家庭に入るべきだと思う。
しかし、せっかく入社できたのに中途半端なところで退職してもいいのか。
社会人経験の浅い私が彼の妻となっても、翔太さんを支えられるのだろうか。
「明菜はまだ仕事を続けたいんだと俺はそう判断していただから……」
彼の言葉の真意を理解しようと私はじっと耳を傾ける。
「俺は守りたいという気持ちから、担当を変えた」
翔太さんの考えを聞いて胸が詰まるような感じがした。
私のことを考えてくれているのだ。
きっと私が婚約者だとかコネがあるとか変な噂をされているのを知っていて、傷つく環境から少しでも避けるために守ってくれたに違いない。
でも、このまま守られるだけの存在として結婚していてもいいのか。
実際に私は翔太さんの家に転がり込んでしまっている状態だ。
愛する人と一緒に過ごしていたいという感情が強くてここにいるけれど、これもただ守られているだけなのかもしれない。
この悔しくて情けない感情をどこにぶつけたらいいの?
唇を噛みしめて、泣いてしまいそうなのをなんとか堪えた。
「……いろいろ考えていただいたことは、すごくありがたいです」
「愛する人を守ることは当たり前のことだから」
「……私も真剣にこの先のことを考えてみたいと思います」
「……え? 俺はっ」
何かを言おうとした翔太さんの言葉を遮った――
「今日は、どこかのホテルに宿泊しようと思います。申し訳ありません。一人になってよく考えてみたいです」
「それは危険だ。もうこんな時間だし……これからホテルを探すなんて危ない。この家で考えてもいいと思う」
「……子供ではありません。私も大人なので自分は自分のことを考えられます」
恥ずかしさと自分の甘さを感じて、ここに立っているのがもう耐えられなかった。
そしてキャリーケースに荷物を詰めて翔太さんの家を出て行く。
玄関まで追っかけてきた彼が私の腕を優しく掴んだ。
「明菜……頼ってくれていいんだ。辛い思いをさせてしまったなら謝りたいし」
私は翔太さんの顔を見た。
愛する人からの慈愛に満ちた瞳を向けられると今はちょっと辛い。
また甘えて泣き出してしまいそうだ。
だから私は視線をそらした。
「大丈夫です。心配しないでください」
彼の手を振り切って、そのまま家を出た。