電話越しで恋をした副社長から、突然プロポーズされました
勢いで家を飛び出してしまったけれど……。
東京での暮らしは経験がないので不安だった。
堂々と歩いているフリでもしなかったら、怖い人に声をかけられるかもしれない。
自分が小心者すぎて笑えてしまう。
まずは、今夜宿泊できる宿を探そうとアプリでホテルの予約を入れた。
会社に行きやすいように比較的会社の近くのビジネスホテルをチョイス。
予約をするとすぐにそこのホテルに向かった。
来週にはまた北海道に戻って北海道支社での片付けなどをする予定だ。
冷静になってみれば、行ったり来たりの生活が少し続いてしまうので、仕事を減らそうとの配慮だったかもしれない。
感情だけが一人歩きし、冷静に話し合うことができなかった。
「私はまだまだ子供だな……」
ホテルに到着しチェックインをする。
ワンルームの部屋にベッドと机が置かれているだけだった。
まだまだ未熟な私。
このまま婚約を続行してもいいのだろうか。
本社で働いて副社長の凄さというのを感じ、私の手には届かないような存在なのだと思い知らされた。
スマホにメッセージが届く。
『明菜、ちゃんと宿を見つけることはできたか?』
『夜中でも困ったことがあったらすぐに連絡して』
『しつこく連絡してしまってごめん。……本当にごめん』
翔太さんは心配しているようで何度も連絡をくれている。
でも私は既読をつけただけで返事はできなかった。
彼という素晴らしい人に自分はふさわしくない。
守られている安心感はあったけれど、これでは自立できないし、私も愛する人を支えていきたいのに何もできていない。
そのせいで自己嫌悪に陥っていたのだった。
でも――
私は私。
中田さんは中田さん。
どんなに羨んでも私は他の人になることができない。
それに――
翔太さんはこんな私を選んでプロポーズまでしてくれた。
未熟で学ぶこともまだある立場だ。
だけど私は私らしく愛する人を守っていきたいし、隣を一緒に歩いて行きたい。
ゆっくり考えていると自分の気持ちが整理できた。
これからは冷静に話し合って、共に前に進んでいきたいと思う。
今週の仕事が終わると、私は一度北海道に戻り、事務所の整理をすることになっていた。
またしばらく副社長と会えなくなってしまうのだ。
愛おしい人と過ごした日々はとても大切でかけがえのないものだった。
北海道に戻る前にちゃんと自分の気持ちを伝えて行こう。
これからも永遠に支え合って、ずっと隣を歩いて行きたい。
感情がしっかり整理された。
心配している彼に何か伝えようと思った。
しかし、もう夜中だったのでメッセージの送信を遠慮した。
次の日、私はオフィスへと向かった。
副社長はかなり忙しそうに働いているようだ。
スケジュールを見てみると、会議やら打ち合わせやらびっちり詰まっていた。
こんな大変な中、私が家を飛び出してしまって迷惑をかけている。本当に申し訳ないことをしてしまった。
と言っても突然また今日家にお邪魔させてもらったら、それはそれで迷惑かもしれない。
『家に行ってもいいですか?』とメッセージでも後で入れてみようかな。
今日の仕事に集中しようと、パソコンをじっと見つめた。