電話越しで恋をした副社長から、突然プロポーズされました
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四月の初めに、北海道支社が閉鎖し、新しい組織体制が出発した。
ホテルで懇親会をすることになっていた。
私も北海道支社で働いていたとのことで参加させてもらう。
立食パーティー形式で役職者のみなさんが思い思いに話をしていた。
「湯元さん仕事もできて本当に助かったから、退職するの取りやめない?」
間宮さんが私の隣で嬉しいことを言ってくれる。
「ありがとうございます。ここで働かせてもらった経験をこれからの人生に絶対に行かせていきたいなと思っていて」
「そうね。たまには顔を出してね」
「はい」
パーティーが進むと社長の挨拶が始まった。社員たちは壇上に視線を向けて話を聞いていた。
続いて翔太さんの番だ。
副社長が壇上に登場すると、その場の空気が一気に華やかになる。
うっとりとしている女性社員がちらほらと見えた。
「北海道支社がなくなってしまったのは残念だが、これからはまた新たな組織体制で頑張っていきたいと思います」
マイクを通して聞く声もやっぱり素敵だ。ずっと聞いていたい声でたまらない。
私は、退職をして家庭に入るからもうマイクをとうしての声を聞くことができなくなるのは残念。その分、家でいっぱい会話を重ねていきたいな。
いや、一緒にカラオケとかに行けばいい声が聞けるかもしれない。そういえば翔太さんの歌声を聴いたことがない。
そんなことをぼんやりと考えていると翔太さんは話の続きを始めた。
「ここでみなさんに個人的なことですがお知らせがあります」
会場が静まり返った。
「私事ですが、五月に入籍することになりました」
発表すると聞いていなかったので、私はびっくりして目を大きく見開いた。
突然の発表にざわついている。
「お相手も紹介したいと思います。明菜、おいで」
そんなの聞いてない!
会場中の人の視線が集まって、私は頭に血が上ってしまいそうだった。
固まって歩けない私の元に翔太さんが壇上から降りてきて迎えに来てくれる。そして私の手を引いて、壇上に連れて行ったのだ。
こんなに大勢の人の前に立ったことがなかったので足が震えたが、翔太さんが力強く手を握ってくれていたので落ち着きを取り戻していく。
「あの子って……北海道支社の?」
「噂は本当だったのね」
そんな声が聞こえてきた。
「実は北海道支社に働いていた彼女は、新入社員だったこともありこれから期待する人材でした。入社式の日に会社じゃないところで彼女と出会ったんです。初めはメールと電話のやり取りでしたが誠実で素敵な人柄に惹かれ自分が恋してしまいました」
副社長と出会った日のことを思い出した。
入社式を控えていてすごく焦っている中、高齢女性のことを助けようとして私は困っていた。
そこに颯爽と現れた翔太さんの姿が脳裏に浮かぶ。
あのときは男性の顔をゆっくりと見る余裕もなくて、ちゃんと挨拶もできなくて。まさか自分の会社の副社長と運命的な出会いをするなんて予想もしていなかった。
そして恋に落ちるなんて――
まさかこんなに注目される場所で結婚発表するなんて思わなかった。
彼は予想外の行動をしてくれる。
これからの人生もワクワクが止まらないような気がした。
「おめでとうございます」
気がつけば会場中から拍手が湧き上がっていた。