【完結】美容系開業医とワンナイト後結婚したら、溺愛されました!


 結婚式が終わり、ホテルのベッドで昨日あんなに愛し合ったというのに、まだ足りないというのか、と慌てて一希の手を掴んだ。

「こっ! 婚姻届提出するんでしょう? すぐに支度しますね!」
「急いでいないから、準備はゆっくりでいいよ」

 優しく伝えられたけれど、美雨は大急ぎで支度をした。あの日、百貨店で買ってもらった化粧品は美雨の肌にとても合っていたらしく、とても化粧ノリがいい。

 髪もしっかりとまとめ髪にして、バッグに貴重品を詰め込んでいくと、つぅ、とうなじを指でなぞられて「ひゃっ!」と変な声が出た。

「な、なんですか?」
「今日は髪、おろしていたほうがいい」
「え?」
「ごめん、夢中で気づかなかった。ここに俺がつけた痕がある」

 どういう意味? と聞き返そうとして、意味が理解できた。美雨は耳まで真っ赤に染まって、口をぱくぱくと動かす。

 なにを言いたいのか、自分でもわからない。ただ、声にもならないのに口を動かしていた。

「ハーフアップにしよう。それなら隠れる」

 美雨の手から櫛を取って、まとめあげた髪を解く。

 サラサラと流れる美雨の髪を櫛で梳かし、一希はハーフアップにした。迷いのない動きだったので、慣れているのだろう。それか、とても器用なのか。

「できた」
「ありがとうございます。器用ですね」
「義姉の髪をよく結んでいたから」
「義姉の?」

 実はまだ、義姉とは会ったことがない。

 義姉が妊娠して、予想以上に体調を崩してしまい入退院を繰り返していたこと、大事をとって結婚式には参加しないことは伝えられていた。

「幼い頃からの付き合いなんだ。たまに『器用だから髪を結ぶのもうまそう』と櫛とヘアゴムを渡されていてね」

 一希は当時を思い出して双眸を細める。

「仲がよいのですね」
「うん。だから兄と結婚するって聞いて、嬉しかったよ」

 知らない一希の過去。それを聞いていると、自分と変わらない感情を持った人間なのだと、しみじみと感じられた。

「お義姉さん、無事に出産できるといいですね」
「そうだね。……じゃあ、そろそろ行こうか」
「はい。なんだか、緊張しますね」

 ただ、婚姻届を提出するだけ。

 あの紙一枚で自分たちの関係性が『夫婦』に変化する。そう考えるとあまりにも不思議な感覚になった。

 なんてことはない、普通の日。

 それが『結婚記念日』になる。

 美雨と一希は、車で役所まで行って、婚姻届を提出した。
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