【完結】美容系開業医とワンナイト後結婚したら、溺愛されました!
(駅まで歩いているうちに身体も温まるだろうし)
駅まで早足で向かうと、少しだけ身体がポカポカし始めた。電車に乗ると暖房がきいていて暑さを感じるほど。
(……この感覚だけは、一生慣れない気がする)
通勤ラッシュや帰宅ラッシュの満員電車を思い出し、肩をすくめる。
ぎゅうぎゅうと潰されるような感覚が苦手で、わざと早くに出社したり、定時上がりの日はウィンドウショッピングをしたり電車に乗る時間をずらしていた。
専業主婦になった今では、自由な時間に買い物に行けるので、満員電車に乗ることはなくなった。なんなら、一希が『重いものを買うなら車のほうがよくない?』と買い物に付き合ってもくれる。
(やっぱり優しい人だなぁ)
調味料も重いし、米だって重い。これに他のものを足すとさらに重くなり、ティッシュやトイレットペーパーなども買えば大きくて歩きづらい。
だから、一希が『車を出すよ』と言ってくれた日は、ありがたくのせてもらって、必要なものを大量に買い込んでしまうのだ。
怒涛の勢いで結婚したので、知らないことは多いだろう。
それを知っていくのが最近の楽しみのひとつだ。
例えば、朝起きたとき、寝ぼけているのか言葉が幼くなること。
ぴょんと跳ねた寝癖が可愛いこと。
好物を食べると目がきらりと輝くこと。
仕事が忙しいときは甘えてくること。
そんな一希が新鮮で、胸が高鳴る。
中学時代に抱いた淡い想いが、まさかこんな形で叶うなんて、と心の中でつぶやく。
(ああ、好きだなぁ……)