二度目の永遠~ある夏にコロラドで見つけた牧場主との運命の恋~

 馬。
 まあ……そうなるだろうか。乃亜が元カレとどういう関係であったかについて、馬を例えに出される。乃亜が女として認識されていない証拠かもしれない。
「そうみたいですね」
 ちょっと虚無な気持ちで、乃亜はがくりと肩を落とした。
 ダグラスは歩きながら首を横に振った。

「品種や色の話をしてるんじゃない。性質についてだ。大抵の馬は、多少の好き嫌いはあっても、危害を加えない限りほとんどの人間を乗せる。でも中には絶対に誰も乗せないと拒否する馬もいる。ノーチェのような奴だ」

 多分、あの雄牛のような青毛の黒馬のことだろう。ノーチェとは確かスペイン語で夜を指す。まさに夜そのもののような姿だった。

「わたしはノーチェみたいに誰も乗せない……ってことですか?」
「違う」
 なぜかダグラスは断言した。
「──もうひとつ、生涯でただひとりしか乗せない馬というのがいる。誰かひとりだけ、この人間だと決めたら、死ぬまでその人物しか乗せない。他は誰も愛さない。そういう馬だ。親父がそうだったんだろう」
 乃亜もそうだと……?
「わ……わたしもそうだと思いますか?」
「多分ね」
「じゃあ、あなたは?」

 ずっと前を見ながら歩いていたダグラスが、隣の乃亜を見下ろした。
 こんな質問を返されるとは思っていなかったのか、どこか驚いたような顔で、穴が開きそうなくらいじっと乃亜を見つめる。
 答えを得られるまで、長い時間がかかった。

「俺は誰も乗せない」
 しばらくして、ダグラスは暗い声でぼそりとそうつぶやいた。乃亜から視線を外し、どこか遠く前方に目を向ける。

「誰も愛さない。愛してはいけない……そういう種類の人間だ」
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