二度目の永遠~ある夏にコロラドで見つけた牧場主との運命の恋~

 その日の夕方。
 マクブライト邸のキッチンに立って、天然石の天板に並べた食材を眺めながら、乃亜は昼間の出来事を繰り返し思い出していた。

(誰も愛さない……か)
 ダグラス自身が彼の意思で、誰も愛したくないと考えているなら、それはわかる。残念なことだとは思うけれど、理解はできる。
 でも『愛してはいけない』は……どうしてだろう?


 あのあと、ダグラスは仕事があるからもう帰ろうと言い出して、もちろん乃亜がそれに逆らえるはずもなく、スプリング・ヘイブン牧場に戻ってきた。

 ダグラスは乃亜をキャビンの玄関まで送ると、夕飯の調理は君に頼むからそれまでは休んでいていいと告げて、いなくなってしまった。
 そして今に至る。
 野菜の山と、冷凍された牛肉の塊を前に、乃亜の心はあちこちに揺れた。

(わたしには関係ないのに……。なんでこんなに気になるんだろう……)

 調理のために早めにキッチンに立ちたいという乃亜に、ダグラスは鍵を預けてくれた。
 つまり、いくらか信頼してもらえるようになったのだと思う。

 乃亜がここスプリング・ヘイブン牧場に辿り着いてから、たった一日……二十四時間がやっと過ぎたばかりだ。
 それなのにすでに乃亜の心はこの場所に根を下ろしてしまったみたいだった。
 コロラドの自然。牧場の馬たち。この邸宅やキャビン。
 そしてダグラス……。
 これからことがすんなりと終わって日本に帰れたとしても、乃亜の中ではきっとなにかが変わってしまっていて、もう過去と同じには戻れない。
 そんな気がする……。
< 103 / 287 >

この作品をシェア

pagetop