二度目の永遠~ある夏にコロラドで見つけた牧場主との運命の恋~
とりあえず乃亜は胸元にかかったソースをキッチンタオルで拭こうとした。赤ワインをふんだんに使ってしまったので、おそらく落ちないけれど。
「熱かっただろう? 氷を持ってくるよ、冷やした方がいい」
「いえ……そこまでは」
「最初は気づかなかったりするんだ、火傷ってやつは。いいから冷やして」
この家を知り尽くした者の動きで、金髪カウボーイは冷凍庫からアイスパックを取り出して乃亜の前に戻ってきた。
ぴたり、と。
乃亜のワンピースの上から、ソースで汚れた部分にアイスパックを当てる。
アイス……。アイスパックだ。冷やしているだけ……なのに。
こんな。
ダグラスといい、このひとといい、多分彼らは他人との距離感が少々バグっている。
知らない男性と向き合って胸元に冷たいものを押しつけられているのだから、当然緊張しない方がおかしい。
でも、どうしてだろう……ダグラスに手を取られたときのような興奮は感じなかった。
ただなぜか、これがダグラスだったらよかったのにと、ぼんやり感じてしまうだけ……。
「君はダグラスの彼女?」
唐突にそう尋ねられて、乃亜は目を丸くした。
「……な、わけないか。でもおかしいな。俺とこんなふうに至近距離にいて、なにも反応しない初対面の女は滅多にいないんだけど」
茶目っ気たっぷりにウインクしてくるので冗談だとわかり、乃亜は笑った。
「それはまた……すごい自己肯定感ですね。ちょっと羨ましいです」
「ただの経験からくる結論だよ。まあ君は可愛いから、こういうのには馴れてるのかな?」