二度目の永遠~ある夏にコロラドで見つけた牧場主との運命の恋~
「わかったよ、ダグラスさん。でもこのお嬢ちゃんの火傷にアイスパックを当ててやるのを忘れないでくれ」
ネイトは去り際、ダグラスの手の中にアイスパックを押しつけて出ていった。
「──アイスパック?」
灰色の瞳が、今度は乃亜に向かって鋭く細められる。
「えっと……少し火傷をしちゃったかもしれなくて……」
「フライパンで頭を殴っただけでは足りなかったのか、ノア?」
「殴ってません。あれは落ちてきたの」
「フライパンは勝手に空を飛ばないんだよ、東京のお嬢さん。どこを火傷したんだ。見せてくれ」
──見せ……!
「無理です、服の下ですから」
「服の下? 服の下にある火傷に服の上からアイスパックを当てていたのか?」
ダグラスはまるで悪夢を見ているみたいに顔を歪めた。アイスパックを握る手がかすかに怒りに震えている。
まずい。多分、かなり。
「一番やってはいけないことだ。もし焼けただれた肌に布が張りついたりしたら──」
「そんなっ、大袈裟です。ただ料理のソースが飛んだだけだから……せいぜい少し赤くなった程度で……」
「見せろ」
ダグラスの懇願は命令形に進化した。
仕方がないのでワンピースの胸元のボタンに手を伸ばすと、ダグラスの手もそれに覆い被さってくる。
──心臓よ、静かにして。
きっとこれは彼の『責任』だから。馬を世話するのと同じ。馬が鍋の中のソースで火傷をしても、きっと彼は同じことをするでしょう。
ふたり一緒になってボタンをふたつ目まで外すと、ほんの少し赤くなった乃亜の素肌が露わになった。火傷というほどでもない、おそらく軟膏を塗っておけばすぐに治ってしまう種類のわずかな肌の赤み。
でも、ダグラスの視線はじっとそこに吸い込まれた。
そして無言で、そこにアイスパックを当てた。
乃亜は思わず小さく笑ってしまった。
「どうして笑う?」
「どうしてって……ふふ、実はネイトさんに同じことをされたとき、彼じゃなくてあなただったらよかったのにって思ったんです。それが叶ったから、なんだかおかしいなと思って」