二度目の永遠~ある夏にコロラドで見つけた牧場主との運命の恋~

 調理に使う赤ワインを少し味見してしまったせいだろうか?
 ひやりと肌に伝わる冷たさが心地いい。わずかに肌にかかるダグラスの吐息は必要以上に荒い気がした。その意味を深く考えようとすると、なぜか頭がくらくらしてくる。

「……この程度ならすぐ治るだろう」
 ダグラスは誰にともなくつぶやいた。
「そう言ったでしょう?」
 乃亜はさらに笑った。

 やっと安堵したのか、ダグラスの関心は乃亜自身から乃亜の料理に移ったらしく、クンクンと匂いを嗅ぎだした。

「この旨そうな匂いがなんなのか聞いても……?」
「牛肉と野菜の煮込み料理です。付け合わせはライスにしたかったんですけど、放っておいたらもうすぐ芽が出そうなジャガイモが沢山あったので、そっちをフライドポテトにしました。ちょっとカロリーは高いメニューですけど、皆さん肉体労働でしょう? サラダも作ったし、そこまで脂っぽくはないと思います」

 ダグラスがやっとアイスパックを離してくれたので、乃亜は巨大なガスコンロの上でまだ煮込まれている鍋の中身を自信満々で披露した。

 褒めてもらう気でいたのに、ダグラスの反応はチベットスナギツネ並みに目を細める、というものだった。
 ちなみに、灰色の瞳の美形カウボーイがそれをやると、とても……色っぽいということを、乃亜は学んだ。

「ノア」
「……はい?」
「君は今夜、少なくともふたりの独身男からプロポーズを受けるよ。覚悟しておいた方がいい」
「それは……誉め言葉だと思って……いいんでしょうか」

 そして──そのふたりの中にあなたは入っているの?

 引き出しからフォークを取り出したダグラスは、鍋の中の肉片を味見して、うーんと感極まったようなうなり声を漏らした。
 いやだ、どうしよう。

 ダグラスが男性として素敵だとか、彼の武骨でいて少し優しいところに惹かれはじめているとか、そういう要素を横に置いておいたとしても、こんなふうに自分よりずっと大きい生き物の胃を満たして満足させてあげるというのは……一種の快感だった。
 癖になってしまいそうなくらいに。
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