二度目の永遠~ある夏にコロラドで見つけた牧場主との運命の恋~
ネイトの車が外でエンジンをふかす音を聞いてから、ダグラスは立ち上がって乃亜の隣に向かった。すでに手伝うことはほとんどなくなっていたが、いくつか調味料が天板の上に出たままだったので、それを彼女の隣で片付ける。
「ひとり、足りませんでしたね」
乃亜は小声でささやいた。
「なにが?」
「今夜、少なくともふたりからプロポーズされるって話です。他に誰だと思ったんですか? ホセ? それともあの十七歳のアルバイト君?」
──どうしてそこに俺という選択肢が入っていないんだい、ミス・ヒロセ?
ダグラスは思った。
思っただけではなくて声に出しそうになった。そして、そんなことを考えついてしまった自分に驚き、そしてすぐに自己嫌悪した。
あってはならないことなのに。
必要以上にじっと彼女を見つめてしまったのかもしれない。乃亜は頬を赤らめてキッチンタオルでこそこそと手を拭いた。
いくつかの未来がダグラスの脳裏に描かれる。こんなふうに、この家にもうひとり誰かがいて、料理をしたり会話をしたり、もしかしたら時々喧嘩をしたりして、共に暮らして──生きていく、未来。
親父が『ハルコ』と欲しかったもの。
「……終わったなら、送っていくよ」
ダグラスは乃亜からの質問に答えなかった。答えてしまったら、なにか取り返しのつかないことが起きると、自覚していたから。