二度目の永遠~ある夏にコロラドで見つけた牧場主との運命の恋~
乃亜は確かにそれなりに英語ができたけれど、レンタカー会社に連絡して事情を説明し代車を用意してもらうまでのやり取りを全部こなすとなると、考えただけで頭が痛くなる。
もし向こうが乃亜に過失があると言い出したらどうしよう?
きちんと反論できるだろうか、英語で?
「うう……」
乃亜はみじめっぽくうめきながら、とりあえず運転席のドアを開けて外によろよろと出た。とりあえず新鮮な空気が欲しかったし、座りっぱなしだった身体をくつろげたい。
「はあ……。うわぁ、さすがに広大……!」
そこには一面、日本にはない種類の雄大な自然が広がっていた。
車窓からのぞく四角に切り取られた風景とはまた違い、外に出て全方面をぐるりと見渡すと、その全貌に飲み込まれそうになる。
乾いた風が頬を撫でた。
地平線があまりにも遠くて、天と地のはっきりした地勢だ。
道路は一応アスファルト舗装されているものの一車線で、どちら方面から車両が来たとしてもエンジン音ですぐ気づくだろう。
だから乃亜はひとしきり風景を楽しむと、とりあえず「ぷすん」の原因を調べるべく車のボンネット側に回った。
「ボンネットってどうやって開けるんだっけ……。説明書あるかな」
作業しやすいように背中まで届く長い髪をまとめて、乃亜は車の先端を押したり引いたりしていじった。
開かない。
「やだ、どうしよう。一応電波はあるけどあやしいし……」
もしかしたらこういった状況のための説明動画があるかもしれない。そう思ってスマホを開いてみるものの、表示されるまでに時間がかかりすぎる。
乃亜は諦めにスマホをどけて両手で顔を覆った。
「もう信じられない……誰か助けて!」
願いは口に出すといいよ、誰かの耳に届いて、叶いやすくなるかもしれないから……と乃亜に教えたのは誰だっただろうか……。
曽祖母だったかもしれない。
曾祖母・春子は時々、乃亜の人生に不思議な指針を与えた。高校生時代にカナダへ一年の留学に乃亜を送り出し、英語を喋れるようにしなさいと諭したのも曽祖母だった。
そのおかげで現在、乃亜はこのありがたくない役目を押しつけられたのだけれど。