二度目の永遠~ある夏にコロラドで見つけた牧場主との運命の恋~
愛想はないけれど、ただの通りすがりである彼が乃亜に向かってヘラヘラする理由はないのだ。十分ありがたい。
あまり一気に注入できるものではないらしく、注ぎ終わるまで時間がかかったので、乃亜は少なくとも会話をしようと試みた。
「あなたは……きっとどこかへ行く途中だったんですよね。引き止めてしまってごめんなさい。なにか予定に遅れてしまわなければいいのですが」
返事はない。
むむむ。
「わたし、実はこの先の牧場に用があるのですけど、どんな場所か知っていますか? 住所しか分からなくて。牧場って普通、それぞれ名前があるんですよね? ネットで調べても周囲にいくつか同じような牧場があって、どれなのかよくわからなくて」
男は作業の手を止めた。
サングラス越しに乃亜の顔をじっと見つめる。
「……その住所とやらは?」
唐突な質問に目をしばたたきつつ、乃亜は何度も確認したおかげですでに暗唱できるそれを答えた。サングラスのせいで表情の機微まではわからないが、彼は少し驚いたように眉を上げた。
「スプリング・ヘイブン」
「え?」
「牧場の名前だ。スプリング・ヘイブン牧場。もし本当にその住所なら」
スプリング・ヘイブン。
スプリング……。
温泉、もしくは……春。
春。
まさか。