二度目の永遠~ある夏にコロラドで見つけた牧場主との運命の恋~
「最初に言ったが、コテージの客なら入り口はこの道じゃない」
「違います、わたしは……」
「君が俺の牧場に用があるようには見えない」
「え」
──俺の?
「あ、あなたの……?」
男は無言でうなずいた。灰色の視線は射るように乃亜を見据えている。その迫力に乃亜の膝はガクガクと震えそうになった。
本物の美形とはそこにいるだけで怖いものなのだ。乃亜ははじめて知った。
「だったら……ウィリアムさんをご存知ですか?」
「ウィリアム?」
「ウィリアム・マクブライトさんです。彼が本来の牧場主ではないのですか? 彼に会いたいんです。そのために日本からここに来ました」
灰色の瞳が、地上に獲物を見つけた鷲のように鋭く光った──ような気がした。もちろんその獲物とは乃亜だ。
間違いない。
「それはできない」
男はゆっくりと静かに告げた。
それは最後通牒の響きを持っていて、乃亜をさらに緊張させる。
でも、乃亜だってここまできて怯むわけにはいかなかった。文字通り地球の裏側までやってきた。飛行機を二回も乗り継いで慣れない左ハンドル右車線を運転し、冷却水とやらの足りないオンボロレンタカーにもめげず……。
「ど、どうして……ですか」
──そしてあなたは誰ですか。
そこまで一気には聞けなかったけれど、乃亜の言葉尻にその疑問のニュアンスがあったのを、彼は感じ取ったはずだ。
彼は手にしていたアビエーター・サングラスを畳むと、チェック柄の長袖シャツの胸ポケットにそれを差し入れた。
そしておもむろに両腕を胸の前で組む。
「なぜなら……親父は心臓発作で入院中だからだ。すでに数日意識がない。来るのが少し遅すぎたようだな、日本のお嬢さん」