二度目の永遠~ある夏にコロラドで見つけた牧場主との運命の恋~
幸い、空港でレンタルした米国用SIMカードの番号がある。乃亜はダッシュボードにあったメモ用紙にその番号書きつけた。
実際のところ、乃亜が予約しているホテルはコロラド・スプリングにあって、車で数時間かかる。手紙を渡したらすぐ戻れると思っていたからだ。
乃亜の差し出したメモを、彼は無言で受け取った。許諾や、ましてお礼のような言葉はもちろん返ってこない。
「お願いします! じゃあ、お世話になりました!」
無理に明るく振る舞って、乃亜は問題のレンタカーに向き直った。
動きますように! 動きますように!
なんとかボンネットのフードを自分で元に戻すと、精一杯の虚勢を張ってイグニッションに鍵を入れる。
動き、ます、ように……! 動け!
──ぷすん!
(そんなぁ!)
レンタカーのエンジンは聞き覚えのある「ぷすん」音をもう一度上げただけで、いくら乃亜が鍵を回し直しても最初の数秒しか反応しない。
(ああ……。どうしよう)
ハンドルに額を乗せて絶望する乃亜を、ウィリアムの息子は同じ姿勢のまま見つめている。……多分。
恥ずかしくて彼の反応を見られなかったから、予想だけれど。
涙目になって泣くのをこらえていると、助手席側の窓をコンコンと叩く音がした。幸い電気系統だけは点いたので、乃亜はボタンを押して助手席の窓を開けた。
「はい……?」
「動かないんだろう?」
が、彼の第一声だった。