二度目の永遠~ある夏にコロラドで見つけた牧場主との運命の恋~
灰色の瞳がさらに細められた。
その視線のあまりの鋭さに、逃げ出してしまいたくなる。
ダグラスの胸中になにが去来しているのか知ることはできないけれど、あまり明るいものでないのだけは確かだった。
「……親父が、若い頃に……兵役で日本に駐屯していた話は聞いている。そこで……日本の女に会ったという話も」
「それがわたしの曽祖母だと思います」
乃亜はうなずいた。
正直、曽祖母のことをそんな、まるで大したことのない過去の小話のように語られるのには傷ついたけれど……。
ダグラスの身の上を考えれば当然だろうか。
父親が母親以外の女性と関係を持った過去など、誰も語りたくないはずだ。
「それで、君の目的はなんなんだ?」
「え? だから手紙を……」
「違う。なんでそれが今更なんだ? 親父が死にかけている今になって……死に際を狙ったように」
「……な……」
「この牧場を乗っ取ろうと企んでいるのか?」
乃亜は絶句した。
ここにきたのは曽祖母の願いで、乃亜自身の選択ではない。
ニューヨークやロサンゼルスやハワイならまだしも、コロラド州の田舎なんて来たいとさえ思わなかった。
言われのない疑惑を投げつけられて、怒りが込み上げてくる。
「そんなこと……冗談でも言わないでください。わたしも曽祖母もウィリアムさんが心臓発作を起こしたなんて知りませんでした。そもそも、日本人であるわたし達がどうやってアメリカの牧場を乗っ取るんですか」
「方法なんていくらでもある」ダグラスは冷淡に言い放った。「代理人を立てて間接的に所有することならできるはずだ。売り払って現金にしてもいい」
「そんな!」
乃亜はダグラスをキッと睨んだ。
もちろん、そんなことでダグラスが怯んだりはしなかったけれど、大人しくメソメソ泣き出すと思っているなら見当違いもいいところだ。
乃亜はいわゆる気が強い女ではなかったけれど、弱虫ではない。
なんといっても乃亜は、春子おばあちゃんのひ孫なのだ。
ま、負けない。
と、思いたい。
「心配しなくても……手紙を渡したら、わたしはすぐに日本に帰ります。一日だって滞在を伸ばしたりしません。わたしの顔を見ることなんて金輪際なくなりますから、安心してください」