二度目の永遠~ある夏にコロラドで見つけた牧場主との運命の恋~
真っ暗な真夜中の牧場で仰向けに倒れ、フライパンの落下によりできた傷を手で押さえる。ジンジンとした痛みに涙が出そうだった。
血……。血は出てるだろうか。
どうしよう、意識は確かにある……けれど立ち上がれない。身体が痺れるような気がするのは、頭を打ったせいだろうか。それとも恐怖のせいだろうか。
もしこれが脳震盪だとしたら、どうすればいいの……。
米国の医療費は恐ろしく高いという。乃亜の旅行者保険は、コロラドの荒野で自らが落としたフライパンに頭をぶつけた怪我をカバーしてくれるのだろうか……。
「ふ……っ、ふぇ…………う……ぅっ」
悔しさと悲しみに涙が浮かんでくる。痛みも手伝って乃亜の涙腺は簡単に崩壊した。
もしかしたら殺人者とその被害者が近くにいるかもしれないのに、切り株に足を取られて転倒、自らが構えていたフライパンに頭をぶつけて脳震盪……。
曾祖母の言いつけで手紙を届けにきただけなのに、まるで金目当ての泥棒猫のような扱いを受けて、いつまで異国にいるべきかもわからない……。
もう嫌だ!
「ノア?」
そんなときだった。乃亜が絶望の淵にいたそのとき、落ち着いた男らしい声が彼女の名前を呼んだ。
「え……」
とささやきを漏らして、乃亜は声がした方に顔を向けた。
もしかしたら殺人者そのひとかもしれないのに、名前を呼ぶ声がなんだかとても優しく聞こえて、恐怖は感じなかった。
仰向けに倒れたままの乃亜を覗き込む、ダグラスの姿がそこにあった。
「なにをしているのか聞いても……?」
真夜中。
彼の背後に昇る月だけが光源で、背の高い大きい影が乃亜の視界を陰らせる。でも、そんな闇の中でも、この男性はひどく男らしかった。できるなら頼りたくなるなにかが、このダグラスにはあった。
乃亜は……なにを……して……?