二度目の永遠~ある夏にコロラドで見つけた牧場主との運命の恋~

 * *


「おはようございます!」
 できるだけ明るい声を心がけて、乃亜はダグラスの家の玄関をノックした。

 最初は無言でノックだけしたのだが、まったく返事がないので挨拶の声を上げることにしたのだ。なぜ彼がまだ家にいると判断したのかといえば、例の白いピックアップトラックが脇に停まったままだからだ。

 一見しただけでもスプリング・ヘイブン牧場は広大だった。
 広大過ぎて、人間の足でどこかを回れるようには思えなかったから。

「おはよう……ございます、ミスター・マクブライト! ここにいないんですか?」

 ダグラスと呼び捨てしていいのかわからなくて、とりあえずそう敬称呼びにしてみる。そもそも家が広いから、聞こえなかった可能性も考えてさらに強くドンドンと叩いてみるが、返事はまったくない。インターホンの類も見当たらなかった。
 出足をくじかれてうなだれていると、どこかから耳慣れないパッカパッカという小気味のいい乾いた連続音が響いてくる。なんの音……?

「あんたはなにをやっているんだ」

 乃亜は声のした方を振り返った。
 そこにいたのはダグラス・マクブライトで、乃亜は驚きに息をのんだ。

 ダグラスは大きな焦げ茶色の駿馬に跨っていた。
 見るからに使い込まれた分厚い革製のサドル。それと同色同質の長い手綱。チェック柄の長袖シャツは色あせたジーンズにたくし込まれていて、足元は黒に近い色合いのブーツで固められていた。そのブーツのかかと部分には、ちょっと痛そうな突起のついた小さな拍車がついている。

 そして、あのアビエイター・サングラスと。
 なだらかに波打つ角度のついた、つばの広い帽子……。
 あ、れ、だ。

「ほ、本物……だぁ……」
 乃亜は思わず日本語で感嘆していた。
 でも間違いない。これは……三百六十度どの角度から見てもまぎれもない……カウボーイだった。
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