二度目の永遠~ある夏にコロラドで見つけた牧場主との運命の恋~

 意外にも、ダグラスの声色には乃亜を馬鹿にするような響きはなかった。笑っているわけでも、怒っているわけでもなく、淡々と事実を確認しているという感じだ。
 乃亜はためらいながらカウボーイと馬を振り返った。

「……ほかに選択肢がありますか?」
「あるよ。この馬に乗ればいいだろう。チャンピオン、このお嬢さんを乗せてほしい。どうだ?」

 ダグラスは馬の首筋を軽く撫でながら、穏やかにさささやく。
 チャンピオンと呼ばれた馬は誇り高く首を反らして、なんらかの意思表示をした。それは……イエス? ノー?

「チャンピオンは君を乗せていいと言っている」
「そ、そうなんですか」
「ああ」

 そしてダグラスは見惚れるような滑らかな動きでチャンピオンから降馬した。
 乃亜は東京生まれで、馬を乗り降りする人間を至近距離で目にするのははじめてだった。だから比べるものがないけれど、ダグラスの動きはこの上もなく美しくて、映像で見るよりずっと……色香があった。

「馬に乗ったことは?」
「ありません」
 例の『ジーザス』を覚悟したのにそれはなく、ダグラスはただうなずいた。すでに呆れを通り越して悟りを開かれてしまったのかもしれない。

「もし牧場の仕事を手伝うつもりでいたのなら──」感情の読めない抑制の利いた静かな口調で、ダグラスは続けた。「なぜそんな恰好をしている?」
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